会計の知識があると仕事ってこんなに面白くなる!!
こんにちは。Bizfront by MENZ-STYLE店長ふくさんです。
実はメインの仕事は会社の経理だったりします。経理”も”やっています。
今回は、
『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』林 總 PHP文庫
を読んで。
読むだけで「会計センス」が身につく本!というキャッチコピーが目印です。攻める経理としては読んでおきたい一冊です。攻めます。
餃子屋と高級フレンチ、どちらが儲かると思いますか??
この本はかなり前に読んだのですが、 私はヤマ勘で餃子屋やろ!!と思ったんです。
数年後、この本を今一度読み返し、この文を書き始めた直後、テレビで
「洋食店が餃子を売り始めて儲かってまっせ!!」
という番組を見かけまして
・・・・・。
両方のいいとこ取りしたらいいんじゃないか。
と、ある意味この本で予想される結論を垣間見てしまいました。。。。
気を取り直して、餃子屋と高級フレンチ、どちらが儲かると思いますか??
この本は前社長(父)の死により、急きょアパレル社長に抜擢されたデザイナー上がりの社長の娘・由紀が、偶然同じマンションに住むもじゃもじゃ頭のコンサルタント・安曇のアドバイスを受けながら、会社を立て直し成長していく、というビジネス小説です。
うちの会社の本棚、ホントビジネス小説多い!!
「シャトー・アンジェラス。サンテミリオンの第一特別級ワインだ」
どうやらコンサル安曇さんはワインがお好きな様子です。これは何かの前フリでしょうか。
さて物語は社長の死によって銀行の融資が突如停止となりいきなりピンチ!藁にもすがる思い(失礼)で新社長・由紀は安曇にコンサルを依頼します。
「まず会計を学ぶことだ」 安曇は由紀に最初にこう告げるのです。
なんと、前社長は会計の知識がなかったために、いろいろ失敗しているのです!!
と言いますか、この会社全体が会計を知らなさすぎたのです!!
グサッ!
私の心に何か突き刺さる音がします。
グサッ!!
あなたの心にも何かが刺さった音が聞こえるかのようです。。。
いろいろ思い当たる節もあるでしょう。
決算書はだまし絵や隠し絵と似ていると安曇は言います。
つまり、見る人によって見えるものが違ったり、ぱっと見はよさそうに見えても、よくよく見ると裏があったり。
結構その企業の主観や意見、意思のようなものがあったりするんですね。
経営者として、まずこの点を知っておく必要がある、と。
急に「決算書」というものが胡散臭いものになってきましたね。。。
確かに、「決算書」というのは胡散臭いシロモノです。そのままの数字を信じすぎちゃイケナイヨ、と安曇は由紀にクギを刺したのですね。
この後の展開が楽しみになるのもビジネス小説の大切なところですが、この本は
バランスシート(B/S)の右側と左側の関係や、
流動資産は現金が一時的に形を変えた姿―つまり現金は仕入によって商品(在庫)→売れることによって売掛金→回収されることによってまた現金に戻る
といったことなど、会計の本質的な部分(経営的な視点?)で「解説」としてしっかり説明されている部分もあるので、業務に携わっている人間にはとても実感が持て、さらに頭が整理される内容です。簿記で習ったこと、業務の流れがつながってくる感覚があります。
わかりやすい手書き風の図も多いので、イメージもしやすいです。
大トロはなぜ儲からないか?
餃子屋と高級フレンチの話は、まだまだお預けです笑
何度目かのコンサル場面で、寿司屋のお話になります。
大トロと、コハダ、どちらが儲かるでしょうか。
・・・はいそこ!!「俺はエンガワが好きだ!」とか盛り上がらない!!
気を取り直していきましょう。
大トロは高級品ですよね。1貫あたりの利益も大きいです。一方コハダは安いです。1貫当たりの利益はそこそこ。さて、どちらが儲かるのか・・・
はいそこ!!コハダとコノシロにまつわるうんちくを垂れない!!詳しく知りたい人は、グーグル先生で!!
はい、気を取り直しまして、
ここでのポイントは、資金回転率です。
大トロは、そんなにたくさんの量は売れません。お値段高いですから。それになかなか仕入がしにくい魚なので、買えるときに一度にドン!と買う。つまりマグロを仕入するのにお金がかかる。最初の元手がけっこう必要。
コハダはそんなに仕入にお金がかかりません。仕入た分、その日に売り切れる。寿司屋は現金商売ですから、手に入ったお金を手に、次の日また仕入れられる。
そうですね。 「在庫」は「現金」の形を変えた姿 なので、マグロは現金が「在庫」の状態でいる時間が長いんですね。
※本ではコハダと大トロを同じ「利益率」に設定しています。「利益額」は大きな差がありますね。
コハダ 売値100円-原価50円=利益50円
1日100貫売れるとすると100貫×利益50円=1日利益5,000円
5,000円×25日(1か月)=利益12万5千円
大トロ 売値500円-原価250円=利益250円
1日8貫売れるとすると、8貫×利益250円=1日利益2,000円
2,000円×25日(1か月)=利益5万円
→大トロは1貫当たりの利益額は大きいが、一日にあまり売れないので、コハダのほうが25日(1か月)で7万5千円儲かる!
さらに大切なのはこちら!
コハダ
1回の仕入に必要な資金 5千円(原価50円×100貫分)
売り切るのに必要な日数:1日
1か月で滞留したのべ資金量 5千円×25日=12万5千円
大トロ
1回の仕入に必要な資金 5万円(原価250円×200貫分)
売り切るに必要な日数:25日
1か月で滞留したのべ資金量 5万円×25日×1/2=62万5千円
→コハダのほうが少ない資金で高回転。お金を有効活用できている。
コハダ 元手5千円必要で25日後には12万5千円
大トロ 元手5万円必要で25日後には5万円
ということです。
大トロは、儲からないんですね。。。。。
元手の資金がかかるわ、資金が在庫で寝ちゃって再資金化されにくいわ。
こういう商売をはじめちゃうと(始めようとすると)きついですよね。
ふふふ。
でもこれが回転寿司だったら!!
「大トロであっても仕入ルートが確保でき、客がどんどん食べてくれれば回転速度は速まる。1本100万円もするクロマグロを1日で売り切ることができたら、資金が滞留する期間はコハダと同じ1日だけだ。多少安く売っても大トロの握りは儲かる商品に変わる。これが、回転寿司の儲かるひみつだ」
そうなんですね、儲かるかどうかは、単品での利益だけでなく、販売の回転、資金の回転も見ないといけないんですよね。普通に考えたらうまくいかなくても、うまくいく仕組みを作ったらいいんです!!!
(この場合、売上、原価、利益、在庫だけの話ですので、それ以外の話は後程!気付いたあなた、スルドイです!既に会計センスをお持ちのようです!)
餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?
いよいよ来ました!!!蒲田の餃子屋に!!!
餃子屋では高級フレンチレストランとの比較が展開されます。ここでのポイントは「固定費」と「損益分岐点売上」
そうですね、「コハダと大トロ」の件ではまだ出てこなかったやつですね。
固定費は売上の増減に関わらずかかってしまう費用のことです。
うちのような服屋で言ったら固定費は店舗やオフィスの家賃とか棚とかでしょうか。
そして、損益分岐点売上というのは、そんな固定費を補える利益が得られる売上、利益が0、つまり「トントン」の売上ってことですね。
大事なのは、この損益分岐点売上がどこにあるか、ということですね。
固定費が低ければ、損益分岐点売上も低いですから、ちょっと売り上げを出せればあとは利益です。
逆に固定費が高ければ、売上をたくさん上げないといけませんから、利益は出にくい体質です。
ということは、固定費が低そうな餃子屋の方が儲かるんだ!!!
と、安易に考えてはいけませんよ!!
はいそこ!!!その昔餃子の王将で餃子セットは餃子二人前分ということを知らなくて、プラスで餃子一皿頼んで大変なことになった!とか武勇伝を語り始めない!!!
気を取り直しまして。
もちろん高級フランスレストランは、粗利(売上-原価(材料費))をしっかり高く設定しています。
なぜ粗利が高い(材料そのものの価値に対してお客様が払う金額が高い)設定ができるのか。
当然、そのお店に来るお客様は「それだけの価値がある」と思っている(期待している)からです。
お客様がその価値を得るために払っていいと思う金額が売値です。
お客様が思う価値とは、材料(この場合食材)の希少性だけでなく、高級感漂うお店の雰囲気のなかで、一流のシェフの腕を堪能できる喜び、もしかしたらリッチな自分に酔えるひと時が味わえる、というのも
全てトータルしてその価値がある、と思えるからそのお店にお金を支払うんですね。
そのためにはもちろん高級なお店づくりをする必要があり、そのために必然固定費は高くなりますが、
高い粗利率を確保していれば損益分岐点を超えてからの利益の幅は大きくなります。
一方で餃子屋はお店にかけるお金=固定費 が低く、餃子の利益率も低いため、
ちょっとの売上でも固定費を越える利益を出せる一方、損益分岐点売上を越えても利益の幅は低い
といったことになります。
餃子の場合、お店の雰囲気とか、腕とかいうよりは、材料(食材)に見合った値段かどうかがお客様にとっては重要になってくるのかもしれませんね。
高級フランスレストランは、ハイリスクハイリターン
餃子屋はローリスクローリターン
といったところですね。
つまりはどちらが良いのか、というのではなく、それぞれの利益構造が違う、商売の仕方が違う、ということなんです。
商売の仕方が違えば、力のいれどころ(お金をかけるところ)が変わる、ということです。
フレンチレストランは、お客様を選ぶでしょうね。お客様を選ぶということは、お店を出す場所の見極めも大事ですね。
皆さんは餃子屋と高級フレンチ、どちらを選びますでしょうか??
さてここで、先ほどの「回転寿司」を思い出してください。
いいとこどりをするにはどうしたらいいかと。
話題として適当なのはやはり「俺のフレンチ」でしょうか。
ここはどんな方法で儲かっているかといいますと、この本には書いてありませんので、別途調べてくださいね(笑)
では最後に。
テストの見直しをしない子は成績が悪い
グサッ!!!
もう私ボロボロです。
現在経理も現場も両方見ている私としては、短い章ながらもうんうんとうなずける安曇の言葉がたくさんありました。
「いいかね。会計情報は決められた勘定科目と金額で表されているに過ぎない。予算金額と決算金額を比較して、両者の差異を出しても、その発生原因まではわからない。もう一度言うが、比較すべきはその金額の後ろにある事実であって、金額の差異ではない。」
「金額の差異からは、その原因となる現場の課題は特定できない。」
そう、必要なのは、
予算と実績の背後にある現場レベルでの「計画した作業」と「実際の作業」を比較すること
なんですね。
これが出来て初めて「使える会計データ」になるんですね。
当社はまだ小さい会社で、フロアも一つですから(意図的にそうしています)現場と会計がすごく近いです。
今月は仕入が多いな、大量の再入荷だ。この商品は確かにコーディネート写真でもたくさん使っていたぞ。いつまでに売り切るのか?キャリーするのか?
今月は集客を強化する月だ。広告費が上がってきたな、どの広告が上がってきたのか?ランディングページの効果は出ているか?
撮影費が増えてきたぞ?撮影効率は上げられないのか?撮り直しなどは増えていないか?なんだか撮影室でバタバタしていたぞ?など。
会計と現場が近いって、仕事の実感が湧くといいますか、すごくいい環境なんだな、って思います。
もうひとつだけ。
ブランド価値とは見えない現金製造機のこと
「ブランド価値がある会社は、ブランド価値のない会社に比べて、同じ製品であってもより多くの現金を稼ぎ出せる、ということだ」
固定資産がなぜバランスシート上の資産として価値があるかというと、それが将来にわたって現金を稼ぎ出すからである。
儲かっている会社は、優れたブランド価値だけでなく、その会社独自のビジネスモデルを持っている」
ブランド価値、独自のビジネスモデル。
考えさせられます。
ただ、
会計の視点を知らなければ、私はアパレル、ECをここまで楽しく考えられなかったと思います。
会計の視点はその業務を深く知り考え、広げていく手助けをしてくれます。
そういった意味で、会計のセンスが身につくと、今の仕事もより面白くなるかもしれませんね!
『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』林 總 PHP文庫
本日のコーディネート
爽やかなサックスのシャツを腕まくりして涼しげに、パンツはジーンズでカジュアルに。「仕事終わったら餃子でも食べに行くか!」と爽やかに後輩を誘っている先輩像コーディネート。